Habitat preference rather than predation risk determines the distribution patterns of filefish Rudarius ercodes in and around seagrass habitats.
Horinouchi M, Mizuno N, Jo Y, Fujita M, Suzuki Y, Aranishi F, Sano M.
捕食リスクではなくハビタットに対する選好性が海草藻場とその周囲におけるアミメハギの分布パターンを決定している
堀之内正博・水野直樹・城夕香・藤田真志・鈴木譲・荒西太士・佐野光彦
要約 海草藻場の優占魚種であるアミメハギの分布パターン決定機構を野外/室内実験により調べた.野外での糸つなぎ実験(捕食圧実験)において,捕食された個体はほとんどいなかったことから,本種に対する捕食リスクは海草藻場周囲のオープンな砂泥地においても低いことが示唆された.さらに,海草藻場および砂泥地における捕食者の存在の有無を組み合わせた室内実験において,捕食者の存在の有無はアミメハギの分布に影響を与えなかった.例えば,捕食者がオープンな砂泥地には存在しないが海草藻場には存在するような場合でも,アミメハギは海草藻場により長時間とどまった.したがって,捕食リスクは本種の分布パターンを決定する第一義的な要因ではないことがわかった.海草が形成する構造の有無と餌の有無を組み合わせた室内実験において,アミメハギは海草の形成する構造それ自体に強い選好性を示した.すなわち,海草藻場とオープンな砂泥地とがある場合には,餌の存在の有無に関わらず,常に前者により長時間とどまった.餌の存在する海草藻場と餌のない海草藻場とがある場合には,アミメハギは前者により長時間とどまった.したがって,本種はまず海草の形成する構造それ自体に対する生得の選好性により海草藻場を選択して分布し,ついでその分布パターンは葉上性の餌の量によって修飾されるものと考えられた.
Marine Ecology Progress Series 488: 255-266. 2013年8月.