Experimental exclusion of the burrowing crab Macrophthalmus japonicus from an intertidal mud flat: effects on macro-infauna abundance.
Tanaka Y, Horikoshi A, Aoki S, Okamoto K.
潮間帯泥干潟における造巣性甲殻類ヤマトオサガニMacrophthalmus japonicusの実験的排除:埋在性マクロベントスへの影響
田中裕一・堀越彩香・青木茂・岡本研
要約 干潟域において,大型の造巣性生物(多毛類や甲殻類など)による底質の攪乱(生物攪拌)はベントス群集の形成に影響を及ぼすことが指摘されているが,国内ではあまり研究されてこなかった.本研究は,国内の潮間帯泥干潟に広く分布する造巣性甲殻類ヤマトオサガニが埋在性マクロベントスに及ぼす影響を明らかにするために,2010年および2011年に本種の排除実験を多摩川河口干潟(東京都大田区)で行った.金属製のケージ(50×50×40 cm)を使い,カニ除去区,ケージ対照区,対照区の3つの操作区を設け,実験を開始してから約1ヶ月後に埋在性マクロベントスの現存量を調べた.また,2011年には底質環境の調査も併せて行った.その結果,ヤマトオサガニは底質表層を攪乱することで,表層の底質環境(chl-a量,含水率,全窒素量)を改変し ,ヤマトシジミとカワゴカイ属の多毛類の現存量に負の影響を及ぼすことが分かった.しかしながら、2010年と2011年で実験の結果が異なったことから,ヤマトオサガニがベントスに及ぼす影響は年によって変化することが示唆された.
Plankton & Benthos Research, 8:88–95. 2013年5月.
多摩川河口干潟のヤマトオサガニ