Seagrass habitat complexity does not always decrease foraging efficiencies of piscivorous fishes.
Horinouchi M, Mizuno N, Jo Y, Fujita M, Sano M, Suzuki Y.
海草藻場の構造的複雑性は必ずしも常に魚食魚の摂餌効率を低下させない
堀之内正博・水野直樹・城夕香・藤田真志・佐野光彦・鈴木譲
要約 海草の形成する複雑性が捕食者の摂餌効率に与える影響を室内実験によって調べた.周年定住種のアサヒアナハゼは待伏型/忍び寄り型の捕食戦略を用い,その摂餌効率は海草がない場合よりもある場合に顕著に高くなった.一方,来遊種のムツ幼魚は追いかけ型の捕食を行い,その摂餌効率は海草の密度が高いほど低くなった.ムツの存在下では,被捕食者ニクハゼ稚魚はその攻撃を避けるため海草藻場内部を利用する場合があったが,ムツが存在しない場合にはアサヒアナハゼの存在の有無にかかわらず,海草藻場近傍のオープンな場所に出現することがほとんどであった.以上から,被捕食者にとって海草藻場内部は海草藻場内部に周年生息する捕食者による潜在的被捕食リスクを常に秘めた場所であり,そのため,それらに対する戦略を持たない魚は海草藻場外部を利用する可能性が示唆された.ただし,来遊してくる捕食者に捕らえられる前に海草藻場内部に逃げ込める安全圏内に分布するのであろう.このように被捕食者が捕食者のタイプの違いに応じて異なるハビタット利用パターンを示すことが,時に海草藻場の際のオープンな場所に小型の魚類が多数みられることの理由の一つであると考えられる.
Marine Ecology Progress Series, 377: 43-49. 2009年2月.