Responses of fish assemblage structures to annual and perennial lifecycles of seagrass Zostera marina in Lake Hamana, central Japan.
Sato M, HorinouchiM, Fujita M, Sano M.
静岡県浜名湖の多年生と一年生のアマモ場にみられる魚類群集構造の違い
佐藤允昭・堀之内正博・藤田真志・佐野光彦
要約 アマモには,主に春に繁茂し,夏や秋に消失する一年生と,数年に渡って生育する多年生の2つの表現型が存在する.そのようなアマモの生活史の違いが魚類群集に与える影響を明らかにするため,静岡県浜名湖において,一年生アマモ場,多年生アマモ場,砂泥地に生息する魚類を採集し,それらの群集構造を比較した.一年生アマモが繁茂している時期は,魚類の種数や個体数は両アマモ場の間でほとんど異ならなかった.しかし,一年生アマモが消失すると,魚類は減少し,種数と個体数は砂泥地のものと同程度になった.これは,一年生アマモ場に棲む季節的定住魚が,アマモの消失によって減少したためであった.一方,一年生アマモが繁茂している時期には,多くの季節的定住魚が一年生アマモ場に出現し,ときには多年生アマモ場よりも多いことがあった.また,周年定住魚は一年生アマモの繁茂や消失にかかわらず,一年生アマモ場よりも多年生アマモ場で多かった.アマモは一般的に多年生だが,高水温や低塩分などの場所では一年生になることが知られている.今後,地球温暖化などの環境変動によって,多年生アマモ場は一年生アマモ場へ変化する可能性があり,それに伴って魚類の群集構造が変化することが示唆された.
Ichthyological Research, 63: 445–459. 2016年11月.