Responses of fish assemblage structures to sandy beach types in Kyushu Island, southern Japan
Nakane Y, Suda Y, Sano M
砂浜タイプの違いが魚類群集の構造に及ぼす影響
中根幸則・須田有輔・佐野光彦
要約 砂浜タイプの違いが魚類群集の構造に及ぼす影響を明らかにするために,海岸内に3つの砂浜タイプ(反射型,逸散型,中間型)がある鹿児島県吹上浜において2006年と2007年の5月,8月,11月に調査を行った.本研究ではまず,物理環境と主要な餌生物である浮遊性無脊椎動物(主にカイアシ類)と表在性無脊椎動物(アミ類と端脚類)の量を砂浜タイプ間で比較した.その結果,反射型は波当たりが強く,粗い底質で,餌生物の乏しい環境であるのに対し,逸散型はその逆,つまり波あたりは穏やかで,底質は細かく,餌生物の多い環境であることがわかった.また,中間型の物理環境や餌生物量は反射型と逸散型の中間的であることも明らかとなった.次に魚類の種数,個体数,および種組成などの群集構造を砂浜タイプ間で比較したところ,種数と個体数は逸散型で最も多く,反射型で最も少なかった.また,種組成もタイプ間で明瞭に異なっていた.このような魚類群集構造の違いが生じる理由を明らかにするために,魚類の食性グループごとに砂浜タイプ間での分布の違いを調べた.その結果,浮遊性無脊椎動物食魚と表在性無脊椎動物食魚は,それらの餌が多い砂浜タイプに多く分布していることが明らかとなった.さらに,遊泳力の弱い小型魚が,波の穏やかな逸散型に多く出現することも理由のひとつとして考えられた.このように,砂浜タイプの違いは餌環境と物理環境の違いを通して魚類群集の構造に影響を及ぼしていることが明らかとなった.
Marine Biology, 160: 1563-1581. 2013年7月.