マングローブ域における護岸造成が魚類群集構造に与える影響
立松沙織・南條楠土・河野裕美 ・佐野光彦
要約 近年, 道路建設や河岸保護などのために河口部のマングローブが伐採され, コンクリートの垂直護岸が造成されることがよくある. そこで,そのような護岸造成が魚類群集構造に与える影響を明らかにするために, 2011年7 月と9 月に沖縄県西表島の与那田川で目視による魚類観察を実施した. 観察はマングローブ域の河川岸部と中央部,および護岸域の河川岸部と中央部の4定点で行い, 魚類群集構造を定点間で比較した. その結果,トランセクトあたりの魚類の種数と個体数は, 河川岸部と中央部ともに護岸域よりもマングローブ域で有意に多く, 特にマングローブ域岸部では圧倒的に多いことがわかった. 種組成もマングローブ域岸部と護岸域岸部の間で大きく異なっていた. したがって, マングローブ域における護岸造成は魚類の種数と個体数を著しく減少させ, 群集構造を変化させることが明らかとなった. マングローブ河川に護岸を設置する場合には,すべてのマングローブを伐採せず,ある程度を護岸前面に残すなど,生息する魚類への影響を最小限に留めるような保全策を講ずる必要がある.
沖縄生物学会誌,51: 27-40.2013年5月.