要約 植松ら(2012)

東京湾の3干潟における底生珪藻の分布

植松幸希・青木 茂・岡本 研・日野明徳

 

要約 東京湾内の3干潟(海の公園、江戸川放水路、葛西臨海公園西なぎさ)において、底生珪藻の種組成に影響する環境要因を明らかにするために、底質と直上水を調べた。底生珪藻は光学顕微鏡で同定し、基質への付着形態によって2つのタイプ(滑走型と固着型)に分類した。全体で67タクサが同定されたが、優占した付着形態の季節変化は干潟間で異なった。優占種は、海の公園では固着型のCatenula adhaerensCocconeis sp. 1とFallacia sp.、江戸川では滑走型のFallacia pygmaea、葛西では固着型のAmphora copulataA. laevissima、滑走型のGyrosigma fasciolaNavicula cf. mollisであった。優占種の類似度に基づくクラスター分析では、底生珪藻群集は場所によって分けられたが、葛西では季節によっても分けられた。冗長性分析(RDA)の結果、(1) 付着形態、特に滑走型は泥分含量と正の相関を示し、(2)葛西の底生珪藻種組成は塩分と関係していた。これらの結果から、東京湾内の干潟の底生珪藻の種組成は、波浪や潮流による攪乱の強さと塩分によって強く影響されることが示唆された。

Sessile Organisms, 29: 1-9.2012年2月.